こんにちはカマキリでございます。皆様は、背面飛び(はいめんとび)というのをご存知でしょうか?陸上競技の走り高跳びで、背中をクルっと後ろに回して飛ぶ、あの跳び方でございます。本日は、その背面飛びを自ら編み出し、オリンピックの金メダリストにまで登り詰めたデック・フォスベリー選手について語らせて頂きたいと思います。
❒ ワタクシが初めてフォスベリー選手と出会いましたのは中学生の時でした。
当時、ワタクシは部活動として陸上競技をしており、部室にありました陸上競技の雑誌にフォスベリー選手が紹介されていたのでございます。
その雑誌の記事は、フォスベリー選手の顔写真入りで彼の功績が紹介されていましたが、またその顔写真が超カッコよかったのでございます。
さらに、彼は工学を専攻していたインテリと紹介されておりましたので、ワタクシなどは、
「頭が良くて、カッコよくて、金メダリストとか、凄すぎだわ~」
と、密かに憧れていたのでございます。
❒ しかし、2000年代に入り、You Tubeで彼の動画を観て、それは幻想であることが分かリました。
実際のフォスベリー選手は、七三分けのちょっとオタクっぽい人でした。
どこでどうしたら、あのようなカッコいい写真になるのか今となっては謎ですが、多分、当時の印刷技術によるものであると思われます。
さらに、追い打ちをかけたのが、彼の助走シーンです。
両手をムギュっと握って助走するシーンは、とても運動神経が良いとは思えなかったのでございます。
初めてYou Tubeで彼の背面飛びを見たときには、正直、ガッカリいたしました。
「想像してた人と随分、違うな~。」
と思い、ワタクシは当初、見るのをやめようかと思いましたが、まっ、いっかということで、そのまま見続けたのでございます。
しかし、見ていくうちにワタクシは彼の壮絶なストーリーに引き込まれ、最後は感動で動くことすらできませんでした。
❒ デック・フォスベリー氏は元々、並の選手でした。と申しますか、並以下の選手だったのでございます。
しかし、怪我をしてしまい、当時、主流であった飛び方では跳躍することができなくなってしまったのでございます。
そこで、ご自身が専攻されていた工学を駆使し、背中から飛べば自身のケガに負担を掛けることもなく、かつ、何より怪我の功名と申しますか、力学的に最も合理的であるという結論に達したのです。
ただ当初は全く上手くいかず、他の人々の嘲笑をかったり、精神的におかしくなりそうになったりと、散々だったのでございます。
しかし、彼は己を信じ、遂に背面飛びを完成させ、オリンピックの舞台に立つのです。
試合は彼の独壇場でした。
他の多くの選手が旧式で跳ぶ中、必殺技の背面飛びにより、次々とバーをクリアし、遂に世界記録を出すのです。
❒ ところが、最後の最後に、彼の力ではどうすることもできない壁にぶち当たります。
体制の壁でございます。
フォスベリー氏が当時の世界記録を出し、1位になっても、そのまま金メダルという訳にはいきませんでした。
試合後、審判団が集まり、彼の飛び方が正当なものか協議をしたのでございます。
仮に、正当なものとして認められなければ、彼は金メダルを取ることかできません。
それどころか、彼の血の滲むような競技人生が全て否定されてしまうのでございます。
スタジアムを埋め尽くした観客は、固唾をのんで見守ります。
しかし、いくら経っても結論がでません。
それは数時間の長きに渡る協議でした。
そして、遂に結論が出たのでございます。
電光掲示板の頂点に彼の名前がはっきりと表示されたのでございます。
金メダルでした。
数万の観客は、惜しみない拍手を送り、それはいつまでも止むことがなく、今でも語り草になっているそうでございます。
ワタクシは、彼のサクセスストーリーを知り、当初、表面的なものだけを見て彼を判断した自分を大きく恥じると共に、戦略と戦術と理念を駆使し、世界一にのし上がった普通の男の壮絶なストーリーに感動せずにはいられなかったのでございます。
以上、カマキリColumnでした。
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